【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】江口洋介(26歳)の場合 vol.5

あっ、いやっっ…

 

リビングで意図せず美久から漏れた一際大きな躊躇い声で、洋介は目を覚ます。一瞬自分がどこにいるのかわからず焦ったが、部屋の片隅に無造作に投げ捨てられている美久のスーツやショーツを見て、美久の部屋で眠りについてしまったことを思い出す。

 

敷かれた布団の端に横になっており、美久がまだいないことを確認すると、洋介は眠けに逆らわず、また瞼を閉じる。

 

ああああ、本当にダメぇぇ…

 

頭がクラクラする中、遠く聞こえるその声は明らかに美久のものだったが、洋介には不思議にも違和感なく、夢見心地の中、美久と戯れる妄想にふける。まるで二人格かのように夢を見ている自分を、自分自身が眺めて楽しんでいるように…

 

違うのっ、そういう意味じゃないっ…

 

違和感を覚えたのは、その瞬間だった…。「これは夢じゃない、現実だ」と理解するまでに時間がかかったが、現実に引き戻されると、「だったら、隣で何が起きているんだ?」という疑問が頭を駆け巡る。動悸は早くなり、嫌な汗をかいているのが、自分でもよくわかる…

 

ああああっ…ダメェ…本当にダメェェェ…

 

何かが隣で行われているのは確かだが、まさか、まさか、自分が好意を抱いている美久が、同期であり親友の航平と行為に及んでいる?そう考えると動悸と汗が止まらず、身体の震えが止まらない。

 

耳をすますと、美久だけではなく、航平の声もかすかに聞こえる。テレビもまだつけたままなのだろうか、何語かはわからないが、どうも外国映画が流れているようだ…

 

「美久さん、俺、入れたいよ…」

「だから、ダメ…」

「どうしても?美久さんこそ本当にいいの?」

 

聞こえくる会話を読み解くと、航平が美久にせがんでいるようだ。「なんでだよ、おまえには亜紀ちゃんがいるじゃないか」口にはできないが、歯を強く噛み締め、眉間に皺がよる…

 

まさかとは思うが、ジュポジュポという音から連想すると、美久が航平のアソコを咥えているのかと疑念し、また身体が震える…

 

「美久さん、ダメだ…もう入れさせて…」

「彼女のことはいいの? 別れられるの?」

「それは…」

 

その会話を聞くと、洋介の身体の震えは収まり今度はまた冷や汗のようなものをかく。血の気が引いているのが、自分でもよくわかる。「航平は入れたがっているだけだが、美久さんは付き合いたがっている?」こう思うと、さっきの会話の辻褄が合うのだ。デリケートなやりとりに、航平が臆したのだろうか、それ以上の会話がなされない。

 

少し安心した洋介だったが、少し間を空け聞こえてきたのは、美久の口から漏れる喘ぎ声だった。その声は吐息から喘ぎ声に変わり、だんだんと声量も大きくなる。

 

あ、ああぁあ、もうダメ、ホントにダメだよぉ、あ、ああ、イっちゃうよぉぉ、ああああああっ…

 

まるで破裂したかのように発せられた言葉の後には、細切れに聞こえる美久の地声から、ビクビクっと美久がオーガズムを迎え、痙攣していることが窺い知れる。

 

気がつくと、洋介の目には涙が溢れていた…

 

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