【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】千葉麗子(36歳)の場合 vol.1

千葉麗子。36歳。航平や洋介が務める人材紹介会社でキャリアアドバイザー部門のマネージャーをしている。京都大学工学部を卒業し、証券会社へトレーダーとしてキャリアをスタートさせたが、断トツの成果を残すも、3年で早々と退社した。感情の高ぶりがないというのが、理由だった。

 

転職先は今の会社で、当時ベンチャー企業だったこの会社に勤めてからも、活躍は目覚ましく、広報、経営企画、マーケティングとその時々でボトルネックとなる部門を歴任し、それぞれ成果を収めている。

 

部長昇格の話も常にあるのだが、本人が断り続けているというのが、もっぱらの噂だ。「血の通わない仕事はしたくないの」というのが理由らしいが、本人が言っているところを聞いたことがないので、これも噂かもしれない。社長と不倫関係にあるという噂まである…。

 

そのクールな風貌とは裏腹に、感情的な噂がつきまとうものの、普段のたたずまいはやはりクールそのものであり、プライベートが全く見えない。その魅惑的な印象から男性社員はもちろんのこと、同性である女性社員からも憧れの的となっている。

 

美久もその一人だ。縁あってか、美久がこの会社に入社したきっかけは麗子だった。本当は、一人の転職希望者としてサービスを受けにこの会社を訪れたのだが、麗子に誘われそのまま入社することになったのだ。

 

登録面接に来た美久の姿勢に「この子は伸びる」と感性が働くと、麗子は即判断する。そこに迷いはなく、麗子なりに経験則に裏打ちされた絶対的なロジックがあるのだ。

 

「転職先、うちの会社にしない?今ちょうど募集してるの。あなたなら喜んで来て欲しいわ」

 

美久は思いもしなかったのでが、この面接の短い時間だけでも麗子と一緒に仕事がしたいと思い、「私でいいんですか?是非お願いしたいです。」と美久もまた即答した。麗子にはそれくらい人を動かす魅力と自信があるのだ。今まで冷静で客観的だった麗子もこの返答には笑顔となり、美久の入社を心から喜んだ。

 

麗子の当時の上司は、「登録面接者を社内に入社させるなんて前代未聞だ。人事に筋が通らない」と憤慨していたが、麗子は冷静に「目的が同じなら、その筋道に拘り過ぎると、当たり前の結果しか出ませんよ。部長が面倒なら、人事には私から筋を通します」と、微塵も自分の行動に誤りはないと悪びれもしない姿はまた麗子の伝説の一つとなった…

 

f:id:nue0801:20170120082706j:image