【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】長瀬亜紀(25歳)の場合 vol.3

居酒屋を出ると、大学ほど近くにある航平の部屋に向かう。途中、駅前のコンビニでお酒を買い込むが、同じ大学の後輩であろう女の子2人が、キャッキャとまるで芸能人のスキャンダルでも見つけたかのように、はしゃいでいる。更衣室で見かけたことがあるが、バドミントン部の一年生かと思い出す。

 

お酒を買い、航平の部屋に入ると、緊張が走る。もう一つの相談とは航平に付き合いたいと告白することだからだ…

 

接点が増えるなか、徐々に惹かれていたが、さっきの居酒屋でこれは本物の恋愛感情だと気づき、このチャンスを逃すまいと思いたって、航平の部屋まで来てしまった…

 

ローテーブル脇のクッションに座ると、自分がとんでもないことをしていると、冷静になりドギマギしてしまう。亜紀は焦ってとにかく酔おうと、缶ビールに口をつける。

 

しかも、航平は、亜紀から切り出すのを急かすことなく、待ち続けているように思える。一言「もう一つの相談って何?」とか、切り出してくれればいいものを、航平は何も問いたださず、黙ってビールに手をつける。そういうところが好きなんだけどな…と矛盾している自分自身が歯がゆく思えてくる。

 

亜紀はいよいよ会話の間に耐えきれなくなり、うつむきながら切り出した…

 

「あのね、相談なんだけど、答えはいらないから聞いてくれる?」

 

航平は少し身構えたように見えたが、すぐに笑顔で切り返す。

 

「いいよ、ただ聞いてる。」

 

亜紀はやっぱり航平が好きだと思いつつ、口では自分の意思とは違う話をしていた。

 

「あのね、私、つい1カ月前まで彼氏がいたのね…。」

 

航平も動揺しているようだ。そりゃそうだ、何の相談かと思えば、元カレの話を突然されたのだ。亜紀はなんでそんな話をし出したんだろうと、自分を恨んだが、

 

「うん、それで?」

 

と、航平は相槌を打つ。亜紀はもうヤケになり色々あった元カレの話を続けるハメになる。

 

「3つ上の社会人だったんだけど、先月別れちゃった…」

 

「うん…」

 

「その彼がね、またよりを戻さないかって、最近連絡してくるの…」

 

航平が話を聞きながらも、唖然としているのがわかる。

 

「で、どうするの?」

 

と、航平が尋ねるのを、心の中では「そんなの断われよ」とでも言って欲しい気持ちになる。

 

「航平はどうしたらいいと思う?」

 

亜紀なりの精一杯の告白だったが、航平は言葉に詰まったようだ。航平も困ったように質問を繰り返す…

 

「亜紀はどうしたいの?その前になんで別れたの?」

 

航平の問いに、亜紀は少し嬉しくなり、

 

「うーん、航平みたいに話を聞いてくれる人じゃなかったから…」

 

とこれまた亜紀なりの告白。これには航平も亜紀の好意を感じとってくれたようで、顔が赤らんでいる…

 

「どういうこと?」

 

と、航平が反応してくれたのが、亜紀にとってはすごく嬉しかった。

 

「あのね、なんでも命令口調で、私の考えなんか聞こうともしなかったの…」

 

亜紀は、過去の不満を思い出しながら、語り始めた…

 

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