【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】内村航平(25歳)の場合 vol.8

居酒屋を出ると、大学ほど近くにある航平の部屋に向かう。途中、駅前のコンビニでお酒を買い込むが、同じ大学の後輩であろう女の子2人が、キャッキャとまるで芸能人のスキャンダルでも見つけたかのように、はしゃいでいる。まあ、ミス一橋大学が男と一緒にコンビニでお酒を買っているのだから、彼女らにとっては同じことなのかもしれない。

お酒を買い、航平の部屋に入ると、亜紀はまた言葉が減る。緊張しているわけではないだろうが、さっき言っていたもう一つの相談をいつ切り出そうか、タイミングを見計らっているようにも思える…

航平は、自分から切り出すことはなく、亜紀から切り出すのを急かすことなく、待ち続けると、亜紀も会話の間に耐えきれなかったようで、うつむきながら切り出した…

「あのね、相談なんだけど、答えはいらないから聞いてくれる?」

いつも明るい亜紀が、神妙になったので、少し身構えたが、すぐに航平は笑顔で切り返す。

「いいよ、ただ聞いてる。」

亜紀は一呼吸起き、

「あのね、私、つい1カ月前まで彼氏がいたのね…。」

思いがけない告白に、航平は動揺を押し隠しながら、

「うん、それで?」

と、相槌を打つ。それでも動揺しているのだろう、少し声が上ずったのではないかと、また動揺する…

「3つ上の社会人だったんだけど、先月別れちゃった…」

「うん…」

「その彼がね、またよりを戻さないかって、最近連絡してくるの…」

航平は話を聞きながらも、亜紀に彼氏がいたこと、しかも相手が社会人だったことに、困惑する。亜紀をすごく身近に感じ、ほのかに恋心も抱いていたが、やはり高嶺の花は高嶺の花なのだ…。

「で、どうするの?」

航平は、本音では「そんなの断っちゃえよ」と思いつつ、それが口には出せない。

「航平はどうしたらいいと思う?」

質問に質問で返された航平は言葉に詰まる。なんとかまた付き合わないようにしたいが、うまく言葉に出来ず、聞き手にまわる質問を繰り返す…

「亜紀はどうしたいの?その前になんで別れたの?」

航平の問いに、亜紀は少し明るくなり、

「うーん、航平みたいに話を聞いてくれる人じゃなかったから…」

と答える。航平は亜紀が自分を好意的に捉えてくれていることに顔が赤らみ、その意図を聞きたくなる…

「どういうこと?」

「あのね、なんでも命令口調で、私の考えなんか聞こうともしなかったの…」

亜紀は、おそらく過去の不満を思い出しながら、語り始めた…