【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】抑えきれない衝動…(夏目美久)

タクシーを降りた3人は、近くのコンビニで缶ビールを買い、美久の部屋に向かった。部屋に着くなり、航平が定位置であるラグの上に腰掛ける。美久はこの光景が好きだった。男が自分の部屋でくつろいでいる姿は、自分に心を許してくれていると、美久には思えるのだ。いつもであれば、男がラグやソファーに腰掛けた時点で、美久の方からキスを迫り、そのまま行為に及ぶところだが、さすがに洋介の前ではそれは出来ない…美久は航平に貪りたいという気持ちを必死に抑え、寝室に向かう。

 

リビングに隣接する部屋は、引き戸で仕切られていて、引き戸を開けると大きなリビングとなる造りだ。しかし、今は6畳のスペースにただ布団マットが敷かれ、みだらに脱ぎ捨てられた服などが投げ捨てられている為、引き戸を開けて大きなリビングとして使われることはまずない。

 

以前はセミダブルのベッドが横たわり、部屋の広さとのバランスがよかったが、同棲していた彼氏が折半としてベッドを引き取った今となっては部屋の広さが余計に寂しく美久には思える。結局、美久は一人の時でも引き戸はいつも閉めるようになり、いつしかこのスペースを寝室と呼ぶようになったのだ…

 

美久はその寝室でスーツを脱ぎ、下着も脱ぎ捨てる。悶々とした気持ちは抑えられず、自分でもはっきりとわかるくらい濡れている。このまま自慰してすぐにでもイキたいという衝動にかられたが、少し触れただけで溢れ出る愛液に自分でも戸惑いを覚える…脱ぎ捨てたショーツははっきりとわかるくらい変色していた…

 

下着を着けずスエットに着替えると、美久の衝動はますます高まる。体のラインがそのまま顕れる自分を想像し、そのラインを眺める航平を想像し、それでも欲望を制御する行為は、美久にとっては自慰に等しかった…

 

美久は寝室から出ると、短パンジャージを二人に手渡す。何人もの男達が着まわした短パンジャージだ。その場でその短パンに着替える航平を横目で意識しながら、美久はキッチンに向かう。

 

洋介はグラスがいいんだよね?」

 

冷蔵庫から先ほど買ってきた缶ビールを取り出すと、その一つをグラスに注いだ。

 

航平と美久は、ソファーテーブルに缶ビールを置き、それぞれラグとソファーでくつろぎ、少し離れたダイニングテーブルでは洋介は、グラスを片手に航平と美久の会話を聞いている。テレビでは、深夜のニュースが流れているが、3人は気に留めてもなく、単なるBGMとなっている。会話の内容は居酒屋の続きであり、美久は執拗に航平遠距離恋愛について追及する。

 

「で、航平はどうするつもりなの?」

「そもそも、その彼女のこと本当に好きなの?」

「もう心が離れているんじゃないの?」

 

どうしても航平に近づきたい美久は、男を落とすには、「今の彼女でいいのか」とまず思わせる。男が一度疑念を抱き出したら、強引にキスをし、既成事実を作ってしまうのが、美久の常套手段だ。

 

ダイニングテーブルに目をやると、2人の話を遠く聞きながら、洋介が今にも寝そうな表情をしているのを美久は見過ごさなかった…

 

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