【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】高まる美久への想い…(江口洋介)

美久の家に着くと、航平は定位置であるラグの上に腰掛ける。部屋の主である美久は当然ソファーの上だし、洋介は、美久により近い位置に平然と座る航平に腹立たしさを感じていた。いつしか、二人とは少し離れたダイニングテーブルが洋介の定位置になっている。この位置だと自然と二人の会話を遠目に聞く格好になってしまう為、本当は美久の座るソファーに腰掛けたかったが、洋介にはそれができなかった…。

 

その広さと家具の量がアンバランスで、がらんとしている印象の部屋を眺めると、洋介はついつい自分がこの部屋に住む余地があるのではと想像してしまう。聞くと、元カレと同棲していた時には美久名義で賃貸契約し、家賃も美久が全て負担していたらしい。おまけに美久が購入したはずのベッド、電子レンジ、洗濯機は別れる際に折半として、その元カレが引き取ったという…。洋介には、何故美久がそんな駄目男に魅かれたのかが不思議に思えたが、自分なら美久にそんな仕打ちはしないのに…とますます美久への気持ちが高まるのだ…

 

寝室からスエットに着替えた美久が出てくる。スエット姿の美久はヒップラインがあらわとなり、また下着のラインが無いことからパンティを履いていないことは明らかだ。上半身はモコモコした上着を着ている為認識出来ないが、おそらくブラジャーもしていないことを、洋介は想像し、その丸みを帯びた体に触れたいと、美久を眺め続けるのだ。

 

元カレのものと思われる短パンジャージを美久から手渡されると、洋介はその短パンに着替えようとスーツを脱ぐ。美久の丸みを帯びた体を想像していた為、股間が恥ずかしいことになっていないかが気になり、美久に背を向け洋介は短パンに足を通した…

 

美久が冷蔵庫から先ほど買ってきた缶ビールを取り出すと、3人はまた飲み直す。航平美久は、ソファーテーブルに缶ビールを置き、それぞれラグとソファーでくつろぎ、少し離れたダイニングテーブルで洋介は、美久がグラスに注いでくれたビールを片手に、航平美久の会話を聞いている。テレビでは、深夜のニュースが流れているが、3人は気に留めてもなく、単なるBGMとなっている。会話の内容は居酒屋の続きであり、美久が執拗に航平遠距離恋愛について追及する。

 

「で、航平はどうするつもりなの?」

「そもそも、その彼女のこと本当に好きなの?」

「もう心が離れているんじゃないの?」

 

と、まるで独り言かのように、美久は続ける。

その執拗なやりとりを見ていると、洋介はただそれだけで嫉妬の念が絶えない…

 

航平は無表情で会話にもならない曖昧な相槌を打つが、いつしか洋介はそれすらも気づけないほどにお酒がまわり、ダイニングテーブルに眠りにつく…

 

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