【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】恒例となった美久の部屋…(内村航平)

美久の家に着くと、航平は定位置であるラグの上に腰掛ける。けして誰かに決められたわけではないが、何度か訪れていると、自ずと座り位置が固定されてくる。部屋の主である美久は当然ソファーの上だし、洋介は性格なのか、リビング横の少し離れたダイニングテーブルが定位置だ。

 

初めて美久の家を訪れたのは、去年の冬だった。その時も今日と全く同じシチュエーションで、3人で飲みに行き、美久の部屋に泊まった。当時美久は彼氏と別れたばかりで、洋介と二人で美久を励まそうと飲み始めたのだが、途中で美久が酔い潰れ、家にまで一人で帰れないというので、タクシーで運んだのが経緯だ。

 

美久は一人暮らしなのだが、それにしては広すぎる部屋であり、以前彼氏と同棲していたことがうかがえる。間取りも1LDKあり、やはり一人で住むには、その広さと家具の量がアンバランスであり、がらんとしている印象だ。聞くと、同棲時には美久名義で賃貸契約し、家賃も美久が全て負担していたらしい。おまけに美久が購入したはずのベッド、電子レンジ、洗濯機は別れる際に折半として、その彼氏が引き取ったという…。航平には、まるで詐欺や強盗のような話に思えたが、求められると断れない美久の性格を考えると妙に納得してしまう…。

 

玄関から廊下を通り、リビングダイニングにはダイニングテーブルとソファーがあるものの、リビングから引き戸で仕切られた寝室にはベッドはなく、マットだけが敷かれ、余計に殺風景に思われた。

 

寝室からスエットに着替えた美久が出てくると、元彼氏のものと思われる短パンジャージを手渡す。航平も洋介も、もう慣れていて、美久が目の前にいようと、その場でその短パンに着替える。美久も目の前で二人が着替えようとも、もう動揺はしない。それが自然であって、いつものように気軽な服装になり、飲み直すのだ。

 

冷蔵庫から先ほど買ってきた缶ビールを取り出すと、3人はまた飲み直す。航平と美久は、ソファーテーブルに缶ビールを置き、それぞれラグとソファーでくつろぎ、少し離れたダイニングテーブルでは洋介が、グラスを片手に、航平と美久の会話を聞いている。テレビでは、深夜のニュースが流れているが、3人は気に留めてもなく、単なるBGMとなっている。会話の内容は居酒屋の続きであり、美久が執拗に航平の遠距離恋愛について追及する。

 

「で、航平はどうするつもりなの?」

「そもそも、その彼女のこと本当に好きなの?」

「もう心が離れているんじゃないの?」

 

と、まるで独り言かのように、美久は続ける。航平はやはりここでも「ほっといてくれ」と内心思いながらも、会話にもならない曖昧な相槌を打つ。洋介洋介で、2人の話を遠く聞きながら、ただビールを飲み続け、今にも寝そうな表情をしていた…

 

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