【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】美久が抱く航平への密かな恋心…(夏目美久)

美久は航平に密かな思いを抱いていた。年齢は年下ではあったが、同時期に入社し、会話する機会も多かったし、多くのCAと同じように航平との仕事は気持ちが高まるのだ。特に美久にとっては、航平が自分のことを認めてくれる、頼りにしてくれる、期待してくれることに、自分の存在価値を強く感じる。美久は、自分のことを必要としている男に惹かれてしまうのだ…

 

一方で航平の同期である洋介とも一緒に仕事をすることが多かった。美久は、洋介が自分のことを意識していることに気がついてはいたが、洋介に対して恋愛感情を抱くことはなかった。洋介が自分に求めてくるのは、同じ思いで仕事をするパートナーであり、あくまで、洋介は自身のために、近しい思いで仕事をする人がいればいいのだ。けして自分のことを必要としているのではなく、洋介自身のために私といるのが心地いいだけだろうと思っている…

 

そんな洋介ともよく飲みに行く。洋介と二人きりで行くことはなく、同期である航平が一緒に来ることを期待して、美久は洋介を誘うのである。

 

その日も、仕事帰りに航平洋介を飲みに誘う。目的は航平と近づくこと…。金曜日ということもあって、お酒が進むと、毎度のように美久は航平に甘える。

 

「彼氏が欲しいよぉ〜、なんでできないのぉ〜、ねぇ航平なんでなのぉ〜」

 

お酒が大好きなわりに、けしてお酒が強くない美久は酔っぱらうと自分でも驚くくらい大胆になれる。航平に腕を絡ませ、意図的に自分の胸を押し付け、そして航平の表情をうかがう。

 

「ねぇなんでなのぉ〜」

 

せっかく腕を組み、胸を押し付けても、航平はいつも無表情…。

 

「もぉ帰りたくないよぉ〜」

航平も早く彼女と別れなよぉ〜」

「遠距離でうまくいってないんでしょ〜」

 

自分なりには精一杯のアピールも、航平はなびかず、表情一つ変えない。

 

12時を回り、店を出ると、美久はわざと歩けないふりをし、航平と一緒になれる時間をうかがう。もっと一緒にいたい、他の男と同じように、二人きりになれば航平は自分を貪るに違いないと心では思っているが、当の航平はやはり無表情で、タクシーを拾い美久を帰そうとする。

 

「ねぇ、またうちで飲みなおそうよぉ〜」

 

こうでも言わないと、航平が帰ってしまいそうなため、美久は酔ったふりをし、立てないふりをし、たとえ洋介が一緒であっても、航平に近づこうとする…。これには、航平も諦めたようにタクシーに乗り込み、美久の自宅のある綱島に向かうのであった。美久は洋介が断るのを期待していたが、そうはうまくいかない。洋介は美久の演技にも気づかず、美久のことを心配そうに見つめ、タクシーに乗り込んだ …

 

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