【小説】社内恋愛

今時の社内恋愛をテーマにしたオムニバス小説

【社内恋愛】疑似恋愛を意図的に妄想させる…(内村航平)

そんな航平は当然CAの間でも人気が高い。それは単純に仕事が出来るだからだけではなく、航平の一緒に仕事を進めるという姿勢が、CAとして期待されていることと思わせるからだろう。人は期待されるとやはり気持ちが高まるのだ。特に女性は仕事そのものの成果よりも、周囲にどのように思われているかが、仕事のモチベーションになることが大きい。とにかく、航平と一緒に仕事をするのが、自分自身の存在価値を認識でき、単純に楽しいのだ。それは、仕事だけではなく、男性としても「こういう人がパートナーだったらいいのに…」という妄想を抱かせ、にわかな恋愛感情となってゆく…。

 

美久も航平ににわかな恋愛感情を抱くCAの一人だ。航平からすると、先輩であり年上女性なのだが、年齢が近いということもあって、同期の洋介とともに仕事帰りに飲みに行くことも多い。美久は年齢よりも童顔であり小柄でもあるため、まるで年下のようにも見えるので、航平達から見ても同い年かのように接しやすいのだ。

 

その日も、仕事帰りに洋介美久と3人で飲みに行った。金曜日ということもあって、お酒が進むと、毎度のように美久が甘えてくる…。

 

「彼氏が欲しいよぉ〜、なんでできないのぉ〜、ねぇ航平なんでなのぉ〜」

 

お酒が大好きなわりに、けしてお酒が強くない美久は酔っぱらうといつもこうだ。航平に腕を絡ませ、クダを巻く。航平は、腕に感じとれる美久の胸の膨らみを頭の中で描きながらも平静を装う。頭の中では、細身の体の割に明らかにわかる胸の大きさを、BカップだろうかCカップだろうかと勝手な憶測をしながらも、表情には出さないのだ。

 

「ねぇなんでなのぉ〜」

 

同じ話を繰り返す美久に対して、航平も洋介も慣れた様子でただただ相槌を打ち、いなすばかりだ。

 

「もぉ帰りたくないよぉ〜」

 

これも、いつもの美久のセリフ…。

 

「航平も早く彼女と別れなよぉ〜」

 

昨年秋に彼氏と別れた美久は、どうも同じ状況に航平をさせたいらしい。

 

「遠距離でうまくいってないんでしょ〜」

 

航平は、笑顔でかわしつつも「ほっといてくれ…」と心の中では思っている。確かに3年間付き合った亜紀とは、今年から遠距離恋愛となり、うまくいっているとは言える状態ではない。遠距離恋愛と言っても、横浜と大阪なんて遠距離に入らないと思ってはいたが、実際はそうもいかないのである。最初のうちは、毎週どちらかが新幹線で会いに行っていたが、それが隔週になり、月一回になり、半年経った今では月に一度も会わないようになってしまった。電話やメールの数も減り、正直どうしていいかがわからなくもなっている…。

 

12時を回り、店を出ると、美久はもう歩けない状態。「またか…」と航平は思いつつ、航平に体を預ける美久を支え、タクシーを拾おうとすると、美久がまだ飲み足りないと言い、

 

「ねぇ、またうちで飲みなおそうよぉ〜」

 

と、これも毎度のセリフ…。金曜の夜に飲むと、横浜駅近くの航平の家か、綱島駅にある美久の家で飲みなおすことが増えてきた。

 

航平と洋介は顔を見合わせ、「仕方ないか…」と今日もタクシーに乗り込み綱島に向かうのであった。

 

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